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日本企業とインド経済の関わり

磐石な経済成長率を見るインド経済に、大いに日本企業も注目している。ここからは、現在までの日本企業のインドで事業展開の歴史を少し整理してみたい。

 まずインドで成功した日本企業の代表例としては、自動車会社のスズキである。第5代、8代首相のインディラ・ガンディーの息子、サンジェイ・ガンディーが創業し国有化されていたマルチと日本企業のスズキが合弁企業を設立した。市場開放に着手する10年以上も前の80年代始めにインドに進出したスズキは、現地部品メーカーと日系部品メーカーの技術提携や合弁事業を支援し、同社の品質基準を満たすサプライヤーの育成に大きく寄与し、インドの自動車産業発展に貢献した(浦田他、2010)。現在では自動車産業のシェアの半分を占め、圧倒的な存在感を示す。インドでも毎年モーターショーが開かれるが、筆者の就労地のニューデリー近郊のノイダでショーが開かれた際、日本から参加したスズキの出張者が「インドでスズキの存在って大きいだね。日本じゃありえないけど、スズキの車が多く並べられていた」と感慨深げに話していた。

 先見の明あって一足早く進出したスズキに習えと、90年代に自動車メーカーとその下請けメーカーが相次いで進出。しかしその後は日本企業の直接投資は停滞する。2013年時点で日本がインドに直接投資した合計額は投資先全体の1.5%程度に留まった(The Economist Intelligence Unit Limited, 2015)。しかし2008年の金融危機以降は、再び直接投資熱が加速している。

 投資額の増大と同時に、インド進出パターンも多様化している。これまでは日本企業は進出のステップとして、販売から現地製造、合弁から出資比率を拡大するという戦略が通例であった。しかし近年は大型M&Aの動向も活発化し、既存の地場企業を買収して市場進出を図る動きも見せている(浦田他、2010)。代表例としては2007年のパナソニックによる電設最大手アンカー買収、2008年の野村證券のリーマンブラザーズ・アジアの買収、2009年の第一三共のラクシンバラー買収などで、業界を問わずインド市場の開拓を進めている。

 

産業別では、鉄鋼業で新日鉄とタタ・スチールや住友金属とブーシャンなど大規模な合弁事業が次々と発表されており、業界への注目を喚起している。同時に、低所得者や貧困ラインより上の階層に向けたBOP(ボトム・オブ・ザ・ピラミッド)ビジネスも市場開拓が進んでいる。たとえば、インドのスーパーでよく見かけた日清食品のカップラーメンなどもその一つである。

また、ホンダやスズキなども低価格のオートバイや自動車販売の販路を拡大しており、農村の消費者を市場に取り込む企業努力を重ねている。エネルギーの利用効率が極めて低いインドで、環境ビジネスに対する日本企業の事業拡大も目覚しい(浦田他、2010)。

                       

 現在までに約750社の日本企業がインドに進出しており、それぞれの主要都市で業種による緩やかなニッチが形成されている。外務省の海外在留届によると2013年時点で現地法人企業は2340社[1]に達す。これに加え出資はしていないが、支店や駐在員事務所などを構える数を加えると、日系企業数は2510社の前年比で146%増と激増しており、近年のインドへの企業展開の高さを物語る。

 東洋経済によると2012年にインドへの新規進出を果たした現地法人数は40件で、その年の世界進出国の第6位にランクした[2]。日本企業の海外事業進出を支援する国際協力銀行JBIC)によると、2014年に日本の製造業企業を対象にしたアンケートでは、10年後の魅力的な事業展開先としてインドが1位に立っており、企業の成長の切り札のように考えられている。実際に、某大手人材派遣会社の日系企業担当者は、現在毎年約130社増のペースで日系企業がインドに進出していると言われており、日増しに日本企業の投資熱は上がっている。

当然のことながらインド在留邦人数も増加している。2014年に3ヶ月以上のインドに在留する邦人は8313人で、5年前の2009年には4501人と比べ約185%増加している。その多くが民間企業関係者で長期滞在している者であり、ニューデリーとその周辺に集住している。

 

2010 浦田秀次郎、小島眞、日本経済研究センター編著  「インド-成長ビジネス地図」日本経済新聞出版社

[1]日本企業が100%出資+インド企業と合弁企業+法人が海外に渡って興した企業の総数

[2]東洋経済オンライン

最新「海外進出先ランキング」トップ50 中国のシェア低下の一方で急浮上するインドネシア

http://toyokeizai.net/articles/-/15578