就労ビザとインドでの生活-インドで現地採用となった日本人

 インドで現地採用となった場合、通常は就労ビザ(Employment Visa)を取得する。就労ビザはインド人だけでは遂行できないと判断される業務に従事する外国人高熟練労働者に対して、発給されるビザである。しかし「高熟練」といっても具体的な定義はなく、何を根拠に高い技能とするのかは不明確である。政府の意図としては、インド人が担える労働を外国人に奪われないための文言だろうが、実際には新卒でも雇用されるので必ずしも高いスキルを持っていなくても発給されている。加えて他国では最終学歴による制限なども設けているが、インドでは高卒であっても就労経験があればビザは下りる。また就労ビザは雇用主が変わると、つまり転職すると新しいビザを申請しなければならない。

 RGFインドによると、今のところ企業の採用が決まり、必要書類を提出すれば大使館でビザ申請を却下されるケースはほとんどないという。

 筆者の元同僚も、ある会社に入社して半年以内に前の勤め先から高待遇の条件で戻って来いとのラブコールを受けた。戻りたい気持ちはあったが、半年で転職を2回もするのは大使館への心証が悪いであろうし、ビザ発給を拒否されるのではと危ぶんでいた。しかし、退職後に難なく新しいビザを手に入れ古巣に帰っていった。

 就労ビザ発給には最低所得条件が課せられている。2010年11月より、企業側は現地採用を雇用する際に、年間2万5,000米ドル(約13万ルピー)の最低所得を保証しなければならなくなった。自国民の就業機会が逼迫していることもあり、高い所得基準値を設けることで、企業がのべつ幕無しに外国人を雇用することを抑制しようというのが狙いだ。一日に最低10ドル以上のその可処分所得を得ているのはインド人がわずか人口の5%しかいないことを踏まえると(2014,The Hindu)、2万5000ドルの給与基準は非常に高い。